通勤手当と労働基準法の関係について|支給規定の考え方も
通勤手当は多くの企業が従業員に支給していますが、労働基準法には通勤手当に関する具体的な規定がありません。 そのため企業は独自の規定を設けて管理を行っています。
本記事では、通勤手当に関する労働基準法の基本的な考え方から、適切な支給規定を定めるための
実務的なポイントまで解説していきます。
<この記事でわかること>
- ・通勤手当の支給義務と労働基準法における位置付け
- ・多様な通勤手段や非課税枠を考慮した支給規定の策定ポイント
- ・働き方の変化に対応するための実費支給という考え方
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労働基準法と通勤手当の基本的な考え方
多くの企業が通勤手当を従業員へ支給しています。
しかし労働基準法においては、通勤手当の支給基準や上限額に関する具体的な規定はなく、企業に
その支給を義務付けているわけではありません。
これは、通勤手当が法律で定められた義務ではなく、企業の裁量によって自由に規定できる福利厚生の一つであるためです。
ただし、就業規則や労働契約において「通勤手当を支給する」と明記されている場合は、企業にその支払い義務が発生します。
このように、労働基準法は直接的に通勤手当の支給を義務付けていないものの、一度規定を設ければその規定に従って支給する責任が生じます。
労働基準法における通勤手当の立ち位置
労働基準法で通勤手当の支給を直接的に義務付ける条文は存在しませんが、労働基準法第11条では、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものを「賃金」と定義しており、 就業規則や賃金規定で支給が定められた通勤手当もこの賃金に該当します。
したがって、企業が通勤手当を支給する旨を就業規則等で規定しているにもかかわらず通勤手当を支給しない場合は賃金未払いとして労働基準法違反となる可能性があり、 労働基準監督署の指導対象になることも考えられます。
通勤手当は、社会保険料の算定対象となる賃金総額に含まれるため、その計算においても正確に把握することが求められます。
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通勤手当の支給規定を定める時の考え方
通勤手当を支給する際には、企業は明確な規定を設けることが必要になります。
支給条件や計算方法、上限額などを具体的に明記することで、スムーズな運用につながります。
テレワークの普及など働き方の多様化が進む中、通勤手当の支給ルールも実態に合わせて見直す必要が生じています。
例えば、定期代一律支給から実費支給への切り替えを検討する企業が増えています。
これらの変更を行う場合も、就業規則や賃金規定にきちんと反映させ、従業員に周知することが大切になります。
通勤手段と支給条件の考え方
通勤手当を支給する際には、企業は従業員のさまざまな通勤手段を考慮して、公平かつ明確な規定を設けることが大切になります。
一般的な通勤手段としては、公共交通機関(電車・バス)、マイカー、自転車、徒歩などが考えられ、それぞれの通勤手段に応じて、通勤手当の支給条件や計算方法を具体的に定めていきます。
公共交通機関を利用する場合、通勤手当は通常、定期券の費用を基に支給されます。
企業によっては「最も経済的かつ合理的と認められる経路」を基準とすることもあります。
複数の経路がある場合は、経済的かつ合理的な経路であれば、複数認められることもあります。
ただし、著しく遠回りな経路は合理的とはみなされません。
マイカーやバイク通勤の場合、通勤手当は一般的にガソリン代や通勤距離を基に算出されます。
自転車通勤の場合も、通勤距離に応じて手当を支給する方法が一般的です。
また、自転車と電車を併用する従業員に対しては、両方の費用を合算して通勤手当を支給する会社もあれば、どちらか一方のみを支給する会社もあります。
徒歩通勤については会社独自の規定によって、通勤距離が2kmを超える場合に手当を支給するケースもあります。
通勤手当の支給は企業の裁量で決まりますが、就業規則や賃金規定に詳細なルールを盛り込むことでスムーズな運用を図ることができます。
支給額の上限金額の考え方
通勤手当の支給には非課税上限額が定められており、この上限額を超過すると、所得税の課税対象となります。
通勤手当の非課税限度額については
「通勤手当に課税されているのはなぜ?!所得税と通勤手当の関連について」
で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
通勤手当の支給上限額を決定する際には、これらの非課税枠を意識することも重要になります。
就業規則で定められた通勤手当の支給額が、所得税法上の非課税上限額を超過する場合には、超過した分が課税対象となるので、従業員の手取り額が減少する可能性があります。
そのため、企業は通勤手当の「上限額」を定める際には従業員の税負担も考慮に入れることが、「通勤手当」に関する「考え方」として望ましいです。
ただし、所得税法上の非課税限度額はあくまで税法上の区分であり、会社が支給する通勤手当の額を制限するものではありませんので、会社独自の「上限額」を設定することができます。
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実費支給の考え方
通勤手当の「実費支給」とは、従業員が通勤に実際にかかった費用を会社が後から精算して支払う方法を指します。
これは、従業員が交通費を立て替え、後日会社に請求し、翌月の給与とともに返還されるのが一般的な流れです。
従来の定期券代を一括で支給する形式と異なり、実費支給では出勤日数や利用した交通手段によって毎月の支給額が変動することがありますが、テレワークの普及により出社日数が減少した企業では、定期代支給から実費支給に切り替えるケースが増えています。
実費支給のメリットとしては、企業にとっては勤務実態に合った通勤手当の支給が行える点、従業員にとっては実際に発生した費用を補填してもらえる点が挙げられます。
ただし、従業員は一時的に交通費を立て替える必要があり、また毎月の支給額が変動することで社会保険の「随時改定」の対象となる可能性も考えられるため、企業は事前にルールを明確に定めておく必要があります。
実費支給額の計算方法は通勤手段によって異なり、公共交通機関の場合は乗車運賃の実費、マイカーやバイク通勤の場合は通勤距離に照らし合わせて、会社が定めた距離単価と出勤日数で計算されることが多いです。
まとめ
通勤手当は、労働基準法において支給が義務付けられているものではありません。
しかし、多くの企業が福利厚生や優秀な人材確保を目的に独自の支給規定を設けています。
一度、就業規則や労働契約で支給を定めた場合、手当は法的性質を持つ賃金の一部とみなされます。
このため、企業には正当な理由なく不支給とすることができない支払い義務が生じる点は留意しておく必要があります。
トラブルを防ぎ、円滑な運用を実現するためには、支給条件を詳細かつ明確に定めておきましょう。
具体的には、公共交通機関の経路指定、自動車や自転車通勤の距離に応じたガソリン代の換算基準、さらに支給額の上限設定などをルール化し、従業員へ周知徹底することです。
また、所得税の非課税限度額を意識した規定作りは、従業員の税負担を抑える観点からも大切です。
近年はテレワークの普及により、定期代の一律支給から出勤日数に応じた実費支給へ移行する企業も増えています。
こうした複雑な計算を正確に行うためには、システムによる管理が有効です。
通勤管理Arvoは、勤務実績に基づいた実費精算や多様な通勤経路の管理に柔軟に対応しており、事務負担の大幅な軽減をサポートします。
自社の規定を見直し、時代に即した効率的な運用を目指す際は、ぜひ通勤管理Arvoの導入をご検討ください。
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監修者:土田恵理
製造業の社内SEを経てバイトルヒクマ入社。入社後は通勤管理ソリューションの専門SE一筋、数多くの企業での通勤管理業務の効率化プロジェクトに参画したのち、通勤管理Arvoの初期開発リーダーを務める。
現在は、エバンジェリスト・営業・広報・マーケティングなど多角的に活動。