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通勤手当と社会保険料、どう関係している?|その計算方法について

2025年07月30日

通勤手当は、社会保険料や所得税の計算においてどのように扱われるのでしょうか。
ここでは、通勤手当が社会保険料の計算にどのように含まれるのか、所得税との違いは何か、そして標準報酬月額への影響や計算方法について詳しく解説します。

通勤手当の社会保険料への含まれ方

通勤手当は、所得税に関しては一定額まで非課税となる制度がありますが、社会保険料の計算では原則全額が報酬に含まれることとなり計算対象となります。
この違いは、所得税法と社会保険関連法規における報酬の定義や制度の目的に起因しています。

なぜ通勤手当が社会保険料の計算対象となるのか、その理由や背景には社会保険の仕組みが関係しています。

通勤手当が社会保険料の計算対象になる理由

通勤手当が社会保険料の計算対象となるのは、社会保険の制度において報酬の定義が広く、労働の対価として経常的かつ実質的に受けるすべてのものが含まれるとされているためです。

健康保険法では、報酬を賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず
労働者が労働の対償として受けるすべてのもの
と定めています。

通勤手当は、従業員が業務を行うために必要な費用であり、労働を提供するための対価の一部とみなされるため、社会保険料を計算する際の標準報酬月額に含める対象となります。
たとえ通勤に実際にかかる費用を弁済する性質を持っていたとしても、それは労働者が働く上で必要な経費であり、その費用を補填することも含めて労働の対価とみなされるのです。

所得税と社会保険料での通勤手当の扱いの違い

所得税では、通勤にかかる費用は
勤務に伴う実費弁済的な性質
を持つと考えられており、所得税法によって定められた非課税限度額までは課税されません。
これは、通勤手当が従業員の手元に残る所得というよりは、通勤という業務遂行に必要な経費を補填するものという考えに基づいています。

一方、社会保険料の計算においては、通勤手当は労働の対価として受け取る報酬の一部とみなされ、原則として全額が計算対象に含まれます。

この違いは、それぞれの制度の目的や報酬に対する考え方が異なるために生じます。
所得税は個人の所得に対して課税するものですが、社会保険料は将来の保険給付の財源となるものであり、労働の対価として受け取る幅広い項目を報酬として捉えている点が異なるポイントです。

標準報酬月額の基本と通勤手当の影響

社会保険料の計算において重要な要素となるのが標準報酬月額です。
これは、社会保険料の計算を簡便に行うために設けられたもので、毎月の給与などを一定の幅で区分したものです。

通勤手当もこの標準報酬月額の計算に含まれ、通勤手当の金額によって社会保険料の額が変動します。 ここでは、標準報酬月額の基本的な仕組みと、通勤手当がどのように影響を与えるのかを説明します。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料を計算する際に基準となる金額のことです。
従業員が事業主から受ける毎月の給与や各種手当などの報酬の総額を、一定の幅で区分した等級に当てはめて決定されます。
この等級は、健康保険では第1級から第50級まで、厚生年金保険では第1級から第32級まであり、それぞれの等級に定められた標準報酬月額に保険料率を掛けることで、毎月の社会保険料が計算されます。

標準報酬月額は、保険料計算の簡素化だけでなく、将来受け取る年金の額や傷病手当金などの保険給付の計算基礎にもなります。

標準報酬月額に含まれる報酬

標準報酬月額に含まれる報酬は、労働の対価として事業主から経常的かつ実質的に受け取るすべてのものです。
これには基本給はもちろんのこと、残業手当、役職手当、家族手当、住宅手当といった各種手当が含まれます。

通勤手当もこの報酬に含まれる対象となります。
金銭で支給されるものだけでなく、通勤定期券や食事、住宅といった現物で支給されるものも、その経済的な価値を報酬として含めて計算されます。

また、年4回以上支給される賞与も標準報酬月額の対象となる報酬に含まれることがあります。

標準報酬月額に含まれない報酬

標準報酬月額に含まれない報酬は、労働の対価としてではなく臨時に支払われるものや、慶弔金、災害見舞金のような一時的な収入が該当します。

また、業務上の出張にかかる旅費や日当なども、事業に必要な経費の精算としての性質が強いため、報酬とはみなされず標準報酬月額の計算対象からは除外されます。

賞与についても、年3回以下の支給であれば原則として標準報酬月額には含まれず、代わりに標準賞与額として別途扱われます。

通勤手当が標準報酬月額に与える影響

通勤手当は標準報酬月額の計算に含まれるため、支給される通勤手当の金額によって社会保険料に影響が出ます。

標準報酬月額は、原則として毎年4月から6月までの3ヶ月間に支払われた報酬の平均額をもとに算定され、この金額がその年の9月から翌年8月までの社会保険料の計算に用いられます。
そのため、4月から6月の間に通勤手当の支給額が増減した場合、それが標準報酬月額の算定に影響し、その後の社会保険料が変更される可能性があります。

例えば、通勤手当が増えることで標準報酬月額の等級が上がると、それに伴って健康保険料や厚生年金保険料といった通勤手当と社会保険料の金額も増えることになります。
これは、パートタイムで働いている方でも同様で、通勤手当を含めた報酬月額に基づいて社会保険料が計算されます。

具体的にどれくらい社会保険料が増えるかは、個々の報酬額や通勤手当の金額、お住まいの地域の保険料率によって異なりますが、基本給が同じでも通勤手当の額が違うだけで社会保険料に差が出ることがあります。

通勤手当にかかる所得税の取り扱い

通勤手当は、社会保険料の計算とは異なり、所得税においては一定額まで非課税となる仕組みがあり、 これは通勤にかかる費用は所得としてではなく、業務に必要な経費として捉えられるためです。
ただし、この非課税となる金額には上限が設けられており、その上限を超える部分については所得税が課税されます。

所得税で通勤手当が一部非課税になる理由

所得税で通勤手当が一部非課税となるのは、通勤にかかる費用は業務に必要な経費と見なす考え方に基づいています。
給与所得者が勤務場所への通勤のために支出する交通費や通勤手当は、
その性質上個人の所得を形成するものではなく、業務を遂行するために必要な実費弁済的なものと
解釈されているため、一定の限度額までは課税の対象外とされています。

これは、会社員が通勤にかかる費用を自己負担した場合にその費用が所得として課税されてしまうと、実質的な手取り収入が減少し公平性を欠くという考えがあり、
通勤手当は従業員が労働を提供するための前提条件として発生する費用であり、その費用を会社が補填することは、従業員の労働対価としての所得とは区別して考えるべきだという判断に基づいています。
この考えに基づいて所得税法によって非課税限度額が設けられており、その範囲内であれば所得税は
課税されない仕組みになっています。

通勤手当の非課税限度額について

通勤手当には所得税が非課税となる限度額が設定されており、この所得税の非課税額の設定により、
従業員は手取り額を増やせるメリットがあります。

非課税限度額は通勤方法によって異なります。

会社から支給される通勤手当が非課税限度額内であれば、その金額には所得税がかからず、従業員は通勤にかかる実費を自己負担することなく手取り収入に影響はありません。
企業にとっても、通勤手当を適切に支給することで従業員の満足度向上につながり、人材確保や定着に良い影響を与えるでしょう。

ただし、徒歩のみで通勤する場合に支給される通勤手当は、原則として全額が課税対象となりますので注意が必要です。
これは、非課税通勤手当が「通勤に必要な交通機関の利用または交通用具の使用」を前提としているためです。

通勤方法に応じた非課税限度額を理解し適切に活用することが、従業員と企業双方にとってメリットとなります。

公共交通機関(電車・バスなど)を利用する場合

電車やバスといった公共交通機関を利用して通勤する場合、所得税が非課税となる通勤手当の限度額は、1ヶ月あたり15万円までと定められています。
この金額には、通勤のために利用する最も経済的かつ合理的な経路と方法で算出した運賃や料金が含まれます。

通勤手当として会社から15万円を超える金額が支給された場合、その超えた部分については給与所得として所得税の課税対象となります。

この非課税限度額は、通勤手段や経路が適切に選択されている限り、会社から支給される通勤手当の
大部分が所得税の対象とならないように配慮された制度と言えます。

ただし、新幹線通勤の場合、特急料金も合理的な範囲であれば非課税通勤手当の対象となりますが、
グリーン車の利用料金は、原則として非課税の対象外となります。

これは、グリーン車の利用が必ずしも経済的かつ合理的な方法とは見なされないためです。

マイカー・自転車などで通勤する場合

マイカーや自転車、徒歩で通勤する場合の所得税の非課税限度額は、通勤距離によって段階的に設定されています。
この非課税限度額を超える通勤手当が支給された場合は、その超過分が所得税の課税対象となります。

交通用具の非課税限度額については
 「マイカー通勤者の通勤交通費はどう考えればいい?計算方法のあれこれ
も合わせてお読みください。

通勤手当が社会保険料に影響するとどうなるか

通勤手当が社会保険料の計算に含まれることによる影響は社会保険料の負担増だけでなく、手取り額の変動や「年収の壁」といった扶養に関する基準にも関わってきます。
これらの影響について具体的に見ていきましょう。

社会保険料の増額

通勤手当が標準報酬月額に含まれることで、社会保険料の金額が増加する可能性があります。
標準報酬月額は社会保険料の計算基準となるため、通勤手当を含めた報酬の総額が増えることで、標準報酬月額の等級が上がる場合があります。
等級が上がると、それに伴って健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料の金額も増加します。
社会保険料は会社と従業員が折半して負担するため、従業員の自己負担額も増えることになります。

手取り額への影響

通勤手当が社会保険料の計算に含まれることで社会保険料が増加すると、結果として毎月の給与の手取り額が減少する可能性があります。

通勤手当として支給される金額自体は増えても、社会保険料として差し引かれる金額も増えるため、その増加分によっては手取り額が目減りしたと感じることもあります。
特に、通勤手当の占める割合が大きい場合や、標準報酬月額の等級が上がることで保険料の増加幅が大きくなる場合には、手取り額への影響が顕著になることがあります。

将来もらえる年金額が増える

反面、通勤手当が社会保険料の計算対象となることで、将来受け取る年金額が増える可能性があります。
なぜなら、厚生年金保険の給付額は、現役時代の給与や賞与といった報酬の平均額、つまり標準報酬月額に基づいて計算されるためです。

通勤手当もこの標準報酬月額に含まれるため、通勤手当の支給額が多いほど標準報酬月額が高くなり、結果として納める厚生年金保険料も増えます。
そして、納める保険料が多いほど、将来受け取る老齢厚生年金の受給額も増える仕組みになっています。

基本給が同じでも通勤手当の金額が異なると、標準報酬月額の等級が変わり、将来の年金額に差が生じます。
厚生年金保険料は将来の年金として戻ってくる性質を持つため、手取り額が減るという側面はありますが、将来の保障が手厚くなるというメリットが生じてくるのです。

このように、通勤手当は単なる交通費の補填だけでなく、将来の年金額にも影響を与える重要な要素であることを理解しておく必要があります。

「年収の壁」への影響

パートタイムで働く方が扶養内で働く際に意識する「年収の壁」にも、通勤手当が影響する場合があります。

この基準額は、社会保険の扶養に入るための年収基準の一つですが、この収入には原則として通勤手当も含まれて計算されます。
そのため、通勤手当を含めた収入の合計が扶養範囲内の年収を超えると、扶養から外れてご自身で社会保険に加入する必要が出てくる可能性があります。

特に通勤距離が長く、通勤手当の支給額が多いパート従業員の方は、通勤手当が年収の壁を超えるかどうかの判断に影響を与える可能性があります。

まとめ

通勤手当は、所得税においては一定額まで非課税となりますが、社会保険料の計算においては原則として全額が報酬として含まれ、標準報酬月額の算定に影響を与えます。
標準報酬月額は健康保険料や厚生年金保険料の計算基準となるため、通勤手当の金額によって社会保険料が増減し、結果として手取り額にも影響が出ます。
また、パートタイムで働く方の「年収の壁」といった扶養の判断においても、通勤手当が含まれることに留意が必要です。

通勤手当が社会保険料や所得税にどのように影響するかを正しく理解し、適切な対応を行うことが重要です。 社会保険にも影響のある通勤手当を正確に管理するためには、通勤管理サービスをご利用いただくことで、正確に、効率よく管理を行うことができます。

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