2025/06/09
離職票における通勤手当の扱いについて|計算方法も紹介
離職票における賃金と通勤手当の扱い

離職票は、退職者が雇用保険の失業等給付を受けるためにハローワークへ提出する重要な書類です。この書類に添付される離職証明書には、離職前の賃金に関する情報が詳細に記載されます。その中には通勤費も原則として含めます。
この情報は、失業等給付の算定基礎となる賃金日額を算出するために必要になります。
ここでは、離職票へ記載する際の、通勤手当の扱い方について具体的に解説します。
<目次>
1. 離職票の賃金に含まれるもの
1-1. 労働の対償として支払われるもの
1-2. 賃金に含まれる手当の例
2. 離職票の賃金としないもの
2-1. 臨時または3ヶ月を超えるごとに支払われる賃金
2-2. 賃金に含まれない手当・費用
3. 離職証明書における通勤手当の記載
3-1. 通勤手当が賃金に含まれる理由
3-2. 定期代を一括支給した場合の計算
3-3. 定期代を精算した場合の計算
3-4. 通勤手当を翌月支給した場合の計算
3-5. 通勤手当の端数処理
4. 離職票作成時の注意点
5. まとめ
離職票の賃金に含まれるもの
離職票に記載される賃金には、労働の対償として事業主から支払われたものが含まれ、各種手当も対象になります。
これら諸手当は名称にかかわらず、労働協約や就業規則などに基づいて支払われる、労働の対償といえるものが該当します。
労働の対償として支払われるもの
離職票における賃金とは名称に関わらず、労働の対償として事業主から労働者へ支払われるもの全般を指します。
これは、基本給だけでなく、様々な手当も含まれます。
例えば、時間外労働や深夜労働、休日労働に対して支払われる割増賃金である残業手当や、役職に応じて支給される役職手当、特定の資格を持つ労働者に支払われる資格手当などがあります。
また、労働者の生活を補助する目的で支給される住宅手当や扶養手当も、労働協約や就業規則に基づき労働の対償として支払われる場合は賃金に含まれます。
通勤にかかる費用として支給される通勤手当も、課税・非課税に関わらず、原則として賃金として扱われます。
これらの賃金に含まれる項目は、雇用保険法において広範に定義されており、離職証明書にはこれらの労働の対償として支払われたものはすべて正確な記載が求められます。
賃金に含まれる手当の例
離職票の賃金に含まれる手当には様々な種類があります。
代表的なものとして、時間外手当、深夜手当、休日手当といった割増賃金があります。
これらは文字通り、所定労働時間を超えて働いた場合や、深夜、休日に労働した場合に支払われる、
労働の対償といえる手当です。
また、役職手当や資格手当も賃金に含まれます。これは、特定の役職や資格に対して支払われるもので、労働能力や職務内容に関連しているためです。
さらに、住宅手当や扶養手当も賃金に含まれる場合があります。
これらは、労働者の生活補助を目的としていますが、労働協約や就業規則に基づき労働の対償として
定められている場合は、賃金として扱われます。
通勤手当も、労働契約に基づいて支払われるものであり、原則として賃金に含まれます。
これらの手当は、失業等給付の額を算定する上で重要な情報になります。
離職票の賃金としないもの
賃金の中には、離職票に記載する賃金には含めないものもあります。
臨時に支払われる賃金や、支給がまれで不確実なものがそれにあたります。これらの賃金は、
離職証明書には記載されません。
臨時または3ヶ月を超えるごとに支払われる賃金
離職票の賃金に含まれないものとして、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金があります。
3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金とは、毎月の定期給与以外で、年間を通じた支給回数が3回以下のものをいいます。 これは一般的に賞与(ボーナス)を指す場合が多いでしょう。
労働の対償として支払われるものであっても、その支給サイクルが3ヶ月を超える場合は、離職票の賃金計算には含めないこととされています。
ただし、就業規則などで年4回以上の支給が定められている場合は、離職票に記載される賃金に含まれることになります。
離職票の賃金には、離職日以前6ヶ月間に支払われた賃金が影響しますが、この期間内に3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金が含まれていても、原則として算定の基礎には含めないのです。
賃金に含まれない手当・費用
支給されることがまれで不確実な臨時に支払われる賃金もまた、離職票の賃金計算には含めません。
例えば、結婚祝い金や傷病見舞金などのような賃金が該当します。
さらに、実費弁償の性質を持つ費用も、原則として賃金には含まれません。
例えば、業務に必要な工具の代金を支給する工具手当や、出張旅費や赴任手当などがこれに該当します。
これらの費用は、労働そのものへの対価ではなく、業務遂行にあたって発生した実費を補填するものであるため、賃金として算入されないのです。
離職証明書における通勤手当の記載
離職証明書では、通勤手当は労働の対償とし、課税・非課税の区別なく、全額を賃金に含めて計算する必要があります。
定期代を数か月分まとめて支給している場合は、その期間で按分した1ヶ月あたりの金額を各月の賃金に算入します。
通勤手当が賃金に含まれる理由
通勤手当が離職票における賃金に含まれるのは、それが雇用保険法上の「労働の対償として事業主が
労働者に支払うすべてのもの」という賃金の定義に該当するためです。
労働基準法においても、通勤手当は賃金の一部として整理されています。
これは、通勤にかかる費用を補填する目的で支給される手当であり、名称が「手当」であることからも、労働の対価としての性質を持つと解釈されています。
たとえ通勤手当が実費弁償の性格を持っていたとしても、出張旅費のように業務遂行のために一時的に発生する費用を補填するものではなく、継続的な通勤に対して支払われるものであることから、
原則賃金として扱われます。
また通勤手当は税法上、一定額まで非課税となりますが、離職票の賃金として計算する際には課税・
非課税の区分なく、支給された全額を賃金に含める必要があります。
このように、通勤手当は労働契約に基づき、労働者が働くために必要な費用の一部を事業主が負担するものであり、その継続性や性格から、労働の対価、すなわち賃金の一部とみなされるのです。
定期代を一括支給した場合の計算
定期代をまとめて支給している場合、離職票の賃金計算では月割り額を算出して用います。
例えば、6ヶ月分の定期代を前払いとして一括支給している場合、その金額を6で割って1ヶ月あたりの
通勤手当額を算出します。この月割額を各月の賃金に加算して離職証明書に記載します。
複数の月分をまとめて支給した場合でも、同様に月割りして各月に按分します。
この際、端数が出た場合は、最後の月にまとめて計上することが雇用保険での取り扱いとされています。
例えば、6ヶ月分の定期代10万円を支給し、月割額が16,666円になった場合、最初の5ヶ月は16,666円、最後の1ヶ月に残りである16,670円を加算します。
このように、定期代を一括で前払いした場合でも、「その期間の実労働分」の賃金として各月に按分して計算することが求められます。
定期代を精算した場合の計算
定期代を既に支給している方が月の途中で退職した場合など、定期券の有効期間が残っている場合は
精算が必要になることがありますが、この場合の離職証明書における賃金計算では、まず支給済みの
定期代から払い戻しされた金額を差し引きます。
例えば、6ヶ月分の定期代を支給し、4ヶ月使用した後に退職し、2ヶ月分の払い戻しがあった場合は、
支給額から払い戻し額を引いた金額を使用月数で按分します。
具体的には、6ヶ月定期代60,000円を支給し、4ヶ月使用して20,000円が精算された場合、実際に通勤のために使用されたのは60,000円から20,000円を引いた40,000円分となります。
この40,000円を4ヶ月で割ると、1ヶ月あたりの通勤手当額は10,000円となります。この10,000円を、
通勤手当として各月の賃金に加算して離職証明書に記載します。
定期代を精算した場合は、実際に通勤に利用した期間に対応する通勤手当額を、離職証明書に反映させる必要があります。
精算額が確定している場合は上記の計算方法を用いますが、精算額が未確定の場合は、最終的な賃金が確定した後に改めて計算し直す必要があります。
通勤手当を翌月支給した場合の計算
通勤手当の支給が翌月になる場合、離職証明書への記載は、その期間の実労働分に対応する賃金として計算し直す必要があります。
例えば、給与が当月締め翌月払いで、通勤費が翌月支給される場合、離職月の翌月に支払われる通勤費は、離職した月の通勤に要した費用として扱われます。
離職証明書には、実際に通勤した期間に対応する通勤費を各月の賃金に含めて記載しなければなりません。
具体的には、離職日以前6ヶ月間の賃金を記載する際に、各月の賃金支払いの基礎となった日数や賃金額を正確に把握し、翌月支給された通勤費を該当する月に按分して加算します。
これにより、「その期間の実労働分」の賃金が正しく反映され、失業等給付の算定基礎となる賃金日額が正確に計算されます。
例えば、月末締め翌月15日払いの会社で、通勤手当が給与と一緒に支払われる場合、3月31日で退職した際には、4月15日に支払われる給与の中に3月分の通勤手当が含まれています。
この場合、離職証明書の3月分の賃金には、4月15日に支払われた通勤手当を含めて記載する必要があります。
このように、通勤手当を翌月に支給する支払い形態の場合は、離職証明書には該当月に実際に使用される通勤手当額を反映させます。
通勤手当の端数処理
通勤手当の定期代を複数月分一括で支給している場合に月割り計算をすることで端数が発生することがあります。
雇用保険の離職証明書では、この端数処理に関しては取り扱いが定められており、月割り計算によって生じた端数は、原則として最後の月にまとめて加算して計上します。
例えば、6ヶ月分の定期代を支給し月割り額に端数が出た場合、最初の5ヶ月は端数を切り捨てた金額を記載し、6ヶ月目の最後の月にそれまでの端数の合計額を加えて調整します。
これにより、支給した定期代の総額と離職証明書に記載する賃金の合計額が一致することになります。
離職証明書では「その期間の実労働分」の賃金を正確に記載することが求められており、通勤手当についてもこの考え方に基づいて計算されます。
離職票作成時の注意点
離職証明書を作成する際は、賃金台帳や出勤簿などの資料を確認し「離職の日以前の賃金支払状況等」を正確に反映させます。
特に、離職日以前の2年間に被保険者期間が12ヶ月(65歳以上の離職者は6ヶ月)に満たない場合は、賃金支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を「完全月扱い」とする特例があり、月の総勤務時間数を備考欄に記入する必要があります。
また、離職証明書は離職日の翌々日から10日以内にハローワークへ提出する必要があります。
まとめ
離職票は、雇用保険の失業等給付を受けるために必要な書類であり、その賃金欄には基本給のほか、労働の対償として支払われる各種手当が含まれます。
通勤手当も、課税・非課税に関わらず全額を賃金に含めて計算する必要があります。
また、定期代をまとめて支給した場合は月割りで各月に按分し、精算があった場合は実際に通勤に利用した期間に対応する金額を計算します。
通勤手当が翌月払いの場合でも、離職した月の通勤分として計算し直して記載する必要があります。
一方で、臨時に支払われる結婚祝い金などの手当や、年3回以下の賞与など3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は、離職票の賃金には含めません。
離職証明書を作成する際は、正しい失業等給付となるよう、通勤手当に関しても正確な扱いを行うようにしましょう。
正確な通勤手当額を管理するには、通勤管理サービスを利用することも有効な方法です。
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