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通勤手当の変更時には社会保険料の随時改定が必要?|条件と注意点を解説

2025年10月23日

人事労務

従業員の引っ越しや交通機関の運賃改定に伴う通勤手当(交通費・通勤費)の変更は、いつ発生するかわかりません。
通勤手当額が変動することによって、社会保険料へ影響が出る可能性があります。
通常、社会保険料は標準報酬月額を基に決定されますが、通勤手当の変更などで報酬額が大幅に変動した場合は、随時改定の対象になることもあります。

本記事では、通勤手当の変更が随時改定の対象となる具体的な条件や、実務上の注意点を詳しく解説します。

社会保険料の随時改定(月額変更届)とは?基本を解説

社会保険料の「随時改定」とは、昇給や降給などにより従業員の報酬が大幅に変動した際に、標準報酬月額を見直す手続きのことです。

通常、社会保険料は毎年1回、4月・5月・6月の報酬を基に決定される定時決定によってその年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が定められます。
しかし、年の途中で報酬に大きな変動があった場合、実際の報酬額と標準報酬月額に乖離が生じてしまいます。

この乖離を解消し、実態に合った社会保険料を納めるために、随時改定が行われます。

通勤手当の金額変更が随時改定のトリガーになる理由

社会保険料の算定基礎となる報酬には、基本給や各種手当など、労働の対償として事業主から受け取るものが含まれます。通勤手当も社会保険の観点では報酬に該当します。

そして、引っ越しや通勤経路の変更、運賃改定などによって通勤手当の支給額が毎月固定的に変動する場合、これは「固定的賃金の変動」とみなされます。
固定的賃金に変動があり、かつ他の要件を満たした場合に随時改定が行われるため、見落としがちですが、通勤手当の金額変更が随時改定のきっかけとなりえるのです。

【ケース別】随時改定の対象となる通勤手当の変更

通勤手当の変更が随時改定の対象となるのは、固定的賃金の変動、かつ標準報酬月額に2等級以上の差が生じるなど、全ての要件を満たした場合です。
通勤手当の変更によって報酬月額が大きく変わるときは、随時改定の手続きを検討しなければなりません。

引っ越しや通勤経路の変更で手当額が変わった場合

従業員の引っ越しや、利用する交通機関の経路変更によって通勤手当の支給額が変わるケースは、随時改定の対象となり得ます。
これは、通勤手当の改定が社会保険における「固定的賃金の変動」に該当するためです。

判断基準は以下のように行います。

  • 金額変動があった月以降の継続した3ヶ月間に支払われた報酬の平均額を算出します。
  • 現在の標準報酬月額と比較して2等級以上の差が生じる場合、随時改定となります。

変更が月途中で行われた場合でも、その月から変動があったものとして取り扱い、3ヶ月間の平均額を計算し判断します。

電車やバスの運賃改定で定期代が変わった場合

鉄道会社やバス会社による運賃改定に伴い、従業員に支給する通勤手当(定期代)の金額が見直される場合も、固定的賃金の変動に該当します。
この場合、新しい運賃が適用された月から、各従業員の通勤手当が改定されます。
改定後3ヶ月間の平均報酬額が、改定前の標準報酬月額と比較して随時改定対象となるかを判断します。
このケースでは、多くの従業員が対象となる可能性も考慮して、該当者をリストアップするなど、計画に準備を進めることが望ましいです。

マイカー通勤の支給単価や計算方法が見直された場合

マイカー通勤者に対する通勤手当の支給ルールが変更された場合も、随時改定の対象になることがあります。
就業規則や賃金規程を改定し、通勤距離に応じた支給単価を引き上げたり、支給上限額を変更したりといったケースがこれに該当します。

このような計算方法の見直しによって、対象となる従業員の通勤手当が毎月固定的に増減する場合は固定的賃金の変動とみなされます。
変動後の3ヶ月間の平均報酬と現在の標準報酬月額を比較し、2等級以上の差が生じれば月額変更届の提出が必要となります。

ガソリン価格の変動による一時的な手当額の変更とは区別される点は注意が必要です。

【ケース別】随時改定の対象にならない通勤手当の変更

全ての通勤手当の変更が随時改定の対象になるわけではありません。
固定的賃金である通勤手当の金額に変動があったとしても条件を満たさない場合は対象外になります。

また、テレワークの導入により出勤日数に応じて実費精算される通勤手当のように、毎月の支給額が変動するものは「非固定的賃金の変動」とみなされ、随時改定のきっかけにはなりません。

報酬月額の等級に2等級以上の差がない場合

随時改定が行われるための重要な要件の一つに、

 「変動後の継続した3ヶ月間の報酬月額の平均から算出した標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じること」

があります。

そのため、通勤手当の変更額が少額であり、変動後の報酬月額の等級がこれまでの等級と比較して1等級差にとどまる場合や等級に変動がない場合は、他の要件を満たしていても随時改定は不要になります。

テレワーク導入などで出勤日数が変動した場合

テレワークの導入により、通勤手当の支給方法を「出勤日数に応じた実費精算」に変更する企業が増えています。
この場合、出勤した日数に、日額を乗算して実費精算をおこなうことが一般的ですが、毎月の出勤日数によって通勤手当支給額が変動するため、これは「非固定的賃金の変動」とみなされます。

テレワークを選択して通勤手当の支給方法が定期代支給から出勤日数に応じた実費精算に変更となった場合は固定的賃金の変動があったとみなされ、随時改定の対象となる可能性がありますが、実費精算へ変更された後の毎月の出勤日数に応じた通勤手当の変動は固定的賃金の変動にはあたりません。

これは、残業手当と同様の扱いとなり、定時決定(算定基礎)の際に保険料が算定されます。

通勤手当の随時改定手続きで注意すべきポイント

通勤手当の随時改定手続きを行う際には、注意すべき点がいくつか存在します。
退職に伴う差額の精算や、過去の通勤手当の改定額については、正しい判断のもと、手続きを行っていきましょう。

3ヶ月定期などの差額精算は報酬に含めない

従業員が6ヶ月定期券などを購入、通勤手当として受け取った後、有効期間の途中で退職や転居をした場合は、 定期券を払い戻し、未使用期間分の金額を会社に返金する差額精算が発生することがあります。

会社に返還される金額や逆に会社から従業員へ支払われる精算金は、一時的な金銭の授受とみなされるため、 これらは社会保険料の算定基礎となる報酬には含まれません。

随時改定の対象月を判断する際の報酬月額の計算において、これらの差額精算分は加算したり減算したりせず、除外して計算を行う必要があります。

通勤手当が遡って支給された場合の変動月の考え方

従業員の転居届の提出が遅れるなどして、通勤手当の金額変更が過去に遡及して適用されることがあります。
この場合、差額分がまとめて特定の月の給与で支払われますが、随時改定の起算月(変動月)の考え方には注意が必要です。
変動月は、差額が実際に支払われた月ではなく、本来であれば通勤手当の額が改定されるべきであった月となります。

例えば、4月に転居し、7月給与で4月からの差額がまとめて支払われた場合、変動月は4月です。
随時改定の判定は、4月、5月、6月の3ヶ月間の給与を対象に行います。
この際、各月の給与額には、本来その月に支払われるべきであった遡及支給分をそれぞれ加算して計算します。

まとめ

通勤手当は社会保険の報酬に含まれるため、その金額変更は随時改定の対象となり得ます。

ただし、随時改定が行われるのは、

 ・固定的賃金に変動があったこと
 ・変動月からの継続する3ヶ月間の支払基礎日数が全て17日以上であること
 ・その3ヶ月間の報酬平均額と従来の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたこと

という3つの要件をすべて満たした場合に限られます。

引っ越しや運賃改定による固定額の変更は対象になりますが、出勤日数に応じた実費精算のような非固定的賃金の変動は対象外です。
随時改定の対象となる条件を正しく理解して、個別のケースに応じて適切に判断することが正確な社会保険事務につながります。
通勤管理サービスには、通勤手当の社会保険月額を毎月出力する機能があります。社会保険の正確な算定のため、通勤管理サービスも選択肢の一つとなります。

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